「フラット化する世界」に疑いの目を向ける天才教授がいる。果たして世界は本当にフラット化しているのだろうか? フラット化した世界市場を前提とするグローバル戦略は正しいのだろうか?

日本企業に足りない人材の“多様性”とは

パンカジ・ゲマワット
1983年~2008年、ハーバードビジネススクールの教員を務め、91年には同スクールの史上最年少の正教授に。現在は、スペインのIESEビジネス・スクール教授を務める。『Redefining Global Strategy』など著書多数。

今の日本と、1980年代後半の日本を比べると、80年代後半という時代は、日本全体がもっと楽観的でした。それと比べると、今の日本は縮こまっていて、元気がありません。2011年に発生した東日本大震災と福島原発事故の影響もあるでしょうが、ここまでポジティブさがなくなっている日本には正直、驚いています。

日本の平均寿命は世界最長、失業率は5%弱と、世界の国々と比較しても圧倒的に優位で、悲観することはありません。

たとえば、ニューヨークのJFK空港と比べて、成田空港は、はるかにインフラが整っています。また今回大災害に遭われた東北地方や福島県の皆さんとつながろうとする日本人の絆や協力精神は、頭が下がる思いです。世界的に有名なレストランガイドである「ミシュラン」の星の数に関しては、世界のどの都市よりも多いし、若者文化の発信力も高いです。

日本は、さまざまな分野において高い技術力・文化力があり、潜在的な力が眠っていると、外国人である私には見えます。ところが、今の日本人は、ここまで高い実績を示してきた経済的な自信もなければ、今後もっと新しいことができるという未来に対する自信もなさそうです。

では、どうすれば日本人が、もっと前向きに、思考を切り替えられるのか。しかしながら、この問題はかなり複雑で、明快な答えはありませんが、ただ1つ、“企業”という文脈で申し上げるなら、「多様性」が、キーワードとして挙げられると思います。