海外に進出している日本企業が、現地人材の採用に苦戦している。ヨーロッパでもアジアでも、進んで日本企業に就職しようという学生はほかの国の企業に比べて少ない。なぜ日本企業で働くことに魅力を感じないのだろうか。その理由をさぐってみたい。
経営理念やシステムの曖昧さが不人気の原因
長年にわたって海外における日本企業の現場を見て痛感するのは、企業のグローバル活動の成功の鍵を握る現地人材に、日本企業がいかに人気がないかということだ。
2005年に中国で2万7000人の大学生を対象に行ったアンケートでは、人気企業トップ50社の中に日本企業はソニー(22位)と松下電器産業(41位)の2社しか入っていない。社会人に対するアンケートでは、「働きたい企業の国籍」として、日本企業は欧米はもとより、韓国、香港、台湾、そして中国地場企業より下にランクされている。
「中国は反日感情が強いから」と思うかもしれないが、欧米でもアジアでも、トップクラスの学生が進んで日本企業に勤めようとする国は、台湾を唯一の例外として全くないと言ってもいい。親日的といわれるタイでさえ、「日本の製品や文化は好きだが、日本企業には勤めたくない」という人が多いのだ。東大大学院を卒業し、日本人に帰化した外国人が、就職先として選ぶのは日本企業ではなく、欧米企業や地場企業だという、悲しい事実もある。
一口に世界といっても、国によって企業選択の基準はかなり違う。
たとえば中国人というと、日本人には「お金で動く」というイメージがあるが、実際には中国の有能な人材ほど自身のキャリアを重視しており、少々給料が安くともキャリアアップに役立つなら、そちらを優先する。
当然「どんな内容の仕事か」「何年働けば管理職になれるか」「どのような基準で昇格を決めるのか」といった点について、納得のいく答えを求める。また実力主義・個人主義の傾向が強く、日本的な年功序列や横並び賃金は忌避される。