人事が強くなれば人材の流出は抑えられる
人事部門のステータスが高くないことも、日本企業が競争力を上げにくい原因となっている。本社人事部も、各国子会社のマネジャークラスについて、年齢や出身大学が書かれた名簿は持っていても、「誰がキーマンなのか」という最重要ポイントは掴んでいない。
人事が、事業会社や国の枠を超えて、グローバル、リージョナルベースでリーダーを選抜しようと試みても、事業会社や各国の利益と合致しないゆえに、計画がはばまれることがある。現地人材からしてみれば、学ぶ機会、異動のチャンス、登用の余地が限定されることとなり、人材の流出につながる。
有能な人材に対して「今、彼のいるタイではポジションの空きがないが、インドネシアで空いているポジションに行かせよう」といった人事異動ができれば、優秀な現地人材の流出を抑えることができるのだ。
一般に欧米企業は、極端に言えば「優秀な人間は何としても確保するが、そうでない人間がやめるのはしょうがない」と考えている。待遇面でも重要な人材に厚く、それ以外の人材に薄い。公正な「ひいき」をしている。
日本企業はこの逆で、ワーカークラスに対しては賃金もよく、福利厚生も充実している。日系メーカーではストが少ないのはこのためだ。普通に働いている並レベルの人材を、大きな差をつけずに全員昇給・昇格させる。本来「ひいき」されるべき優秀な人材、高業績を上げた人材が逃げていくわけである。平等に見える不平等である。
しかし、その国でその国にあった製品を開発したり、販売するとなれば、日本流ではうまくいかない。優秀な現地人材がいなければ市場は開拓できないし、企業のイメージをよくしなければ優秀な現地人材が獲れない。
グローバル化時代に日本企業が生き残るためには、各国の優秀な現地人材をいかに登用してダイバーシティーなオペレーションを実現していくかにかかっている。そのためには現地人材を選抜育成するシステムを構築することと、優秀な人材に働いてみたいと思ってもらえるグローバルブランディングが不可欠である。