国と国の間の差異、障壁には「文化的(Cultural)」「制度的・政治的(Administra tive/Political)」「地理的(Geographical)「経済的(Economic)」という4つの側面が、あります。この頭文字を取って、私は「CAGE」と呼び、差異の度合いを分析するためのフレームワークを提唱しています。
では、CAGEの観点から捉えた、インドと欧米の関係性はどうでしょうか。
まず「C」の「文化的な隔たり」で言えば、インドのIT輸出の85%は英語圏なのですが、インドのIT業界の欧州への浸透度は依然として低いままです。
その理由の1つとして「A」の「制度的、政治的な障壁」が挙げられます。欧州の法律で、オフショア(システム開発や運用管理業務などを海外の事業者や海外子会社に委託すること)を禁じていたり、たとえオフショアしても、企業にとってはあまり旨みがない法制度になっているのです。
「G」の地理的な側面から言えば、できる限りアメリカから近い地域でオフショアを行ってほしいという、強いクライアントの要望が存在します。そのため、実際のオペレーションを、ラテンアメリカ地域に設定する会社が多くあるのです。
最後に「E」の「経済的な隔たり」ですが、もし世界が経済的に完全にフラット化されているのであれば、インド人のエンジニアやIT業界で働く人の給料も、アメリカ人並みになっているはずです。しかし、インド人の賃金は、アメリカ人の15%程度で、多少上がったとしても20%がせいぜいです。これって「フラット化」しているといえるでしょうか?