相続が起きてからでは間に合わない

相続した財産を分けるには、法定相続人全員で分け方を話し合う「遺産分割協議」を行ったうえで全員が合意する必要がある。この分け方が決まらないと、原則として財産の名義を変更することができず、預貯金を使うこともできない。なお、相続があったことを金融機関が知った時点で故人の預金口座は凍結され、お金を引き出すには全員の合意が必要になる。

だが、実際に相続が起きたときには、通夜や葬儀の場で財産分けの話をするのは難しい。次に全員が顔を合わせるのは49日の席などになる場合も多いが、そこで財産分けの話し合いをするためには、財産の内容をすべて調べてリストアップしておかなくてはならない。法要の手配やさまざまな手続きに追われる中で大変な作業になるが、少しでも漏れがあると、隠していたのではないかと疑われることにもなりかねない。そして、話し合いがまとまらなければ財産分けもできず、気まずいままにどんどん時間が過ぎてしまう。

親が亡くなった直後は誰もがナーバスになっている。その中では、冷静な話し合いが進まないということもある。だからこそ、家族全員が元気で冷静な判断ができるうちにさまざまなことを話し合っておくことが重要だ。

話し合った内容は、書面の形になっていればなおいいし、さらに遺言書ならベストといえる。正式な遺言書があれば、遺産分割協議を行う必要もない。特に、介護に尽くした人がいる場合や、子どものいない夫婦の場合などは遺言書の効果が大きいので、正式な遺言書が望ましい。

(有山典子=構成)
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