たった1軒の自宅を誰がもらうのか? 大した財産もなく相続税もかからない家で、もめごとが増えている。相続問題は決して人ごとではない。家族が仲違いしないために早めの対策が必要だ。
「相続問題」と「相続税問題」は別物
「うちには大した財産なんてないから、相続の問題なんて関係ない」
もしそう思っているなら、それは大きな間違いだ。財産が少ないと関係ないのは、「相続」ではなく「相続税」の問題である。
相続税がかかる人はほんの一握りにすぎず、今のところ、亡くなった人全体の4.1%だけだ(2009年)。これは、相続税に「5000万円+1000万円×法定相続人数」の非課税枠があるためで、もし相続人が3人なら、遺産8000万円までは相続税がかからないことになっている。相続税は増税の方向で現在、国会で審議中だが、増税後でも相続税がかかるのは全体の6%程度といわれている。
つまり、ほとんどの家に相続税はかからない。だが、実際には、相続のもめごとは急速に増えている。家庭裁判所に持ち込まれる相続関係の相談件数は2010年には約17万件で、この10年でおよそ2倍というペースだ(図1参照)。
1年間に亡くなる人の数は約100万人なので、17万件というのは全体の17%にあたる。一般の家庭ではよほど深刻な事態にならないと裁判所まで行かないだろうから、相談に行かないまでも問題が起きているケースまで含めれば、全体の30~40%は相続でもめているかもしれない。
さらに、財産が少ない人のほうがもめるケースが増えている。遺産分割事件の件数を見ると、財産5000万円超の人では横ばい傾向にあるが、5000万円以下の人は年々増加している(図2参照)。
財産が多い人は専門家に相談するなど、早くから対策を立てていることが多い。また、財産が多ければ、比較的分けやすいため問題が起きにくいのかもしれない。だが、少ししかない財産を平等に分けるのは難しく、そこでもめごとも起きてしまう。つまり、相続では「大した財産はないから何も対策を考えていない」という人に問題が起きやすい、ということなのだ。