――父の遺産は自宅(評価額3000万円)のみ。自宅は山田さんが居住中
山田さんは同居していた父の死後、唯一の財産である自宅を兄と2分の1ずつ共有名義で相続し、その家に住み続けていた。3年後に兄は職を失い、山田さんに「自分の持ち分を買い取ってほしい」と言ってきた。山田さんにそれだけの貯金はなく、自宅を売って兄にお金を渡すことになってしまった。
たった1軒の自宅を兄弟で“平等”に分けるため、共有名義にして持ち分を法定相続分どおりにするケースは少なくない。
山田さんの場合も、兄が相続のときに「法定相続分どおりに分けたい」と主張したため、自宅を半分ずつ共有名義にすることにした。
だが、不動産を共有名義にすると、後で問題になることが多い。
共有名義の不動産は、全員の合意がないと建て替えることも売ることもできない。このケースのように共有者のうち1人が換金したいと思っても、共有名義の持ち分だけ買ってくれる人はまずいないので、ほかの共有者が買うか、一緒に売るしかなくなってしまう。また、維持管理費用の負担や修繕をめぐってもめることもある。
さらに大変なのは、共有者が亡くなったときだ。そのときは、配偶者や子どもが相続することになる。そうすると、甥や姪と共有することになったり、さらに、次の世代になると、いとこ同士が共有することになってしまう。関係が疎遠になるうえに人数がどんどん増え、ほとんど会ったこともない人たちが1軒の家を共有することになって、建て替えや売却の話し合いも困難になるだろう。
共有にすれば、そのときは仲よく分けた気になるかもしれない。だが、実は問題を先送りにして、さらに複雑化させているだけだ。