図を拡大
田中家
■田中家の場合
――夫の遺産は自宅マンション(評価額2200万円)と預貯金200万円。田中さん夫婦に子どもはいない

子どものいない田中さんは夫が交通事故で急に亡くなってしまった。遺された財産は住んでいるマンションとわずかな預貯金しかない。すべて田中さんが相続すると思っていたところ、義姉と甥が「遺産をもらう権利がある」と言ってきた。法定相続分どおりに分けるとマンションを売るしかなく、住むところを失ってしまう――。

田中さんのように子どものいない夫婦で夫が亡くなった場合には、妻は「財産はすべて自分が相続する」と考えるのが普通だろう。

だが、法律では、子どものいない夫婦のどちらかが亡くなった場合、配偶者のほかに親や兄弟姉妹が相続人になるとされている。

この場合の法定相続分は、亡くなった人の親が健在なら、配偶者が3分の2で親が3分の1。両親とも亡くなっていて兄弟姉妹がいるときは、配偶者が4分の3で兄弟姉妹が4分の1。兄弟姉妹が亡くなっていれば、その分は甥や姪が代わりに相続する(代襲相続)。

田中さんのケースでは、夫の両親はすでに亡くなっているので、田中さんの法定相続分は4分の3。残りの4分の1については、義姉と甥が8分の1ずつということになる。この権利は法律で決まっているので、主張されるとどうにもならない。

田中さんの自宅マンションや預貯金は、すべて夫の名義になっている。実際には夫婦2人で力を合わせて築いた財産かもしれないが、夫の名義である以上、基本的に夫の財産とみなされてしまう。

田中さんの場合では、自宅マンションの評価額2200万円と預貯金200万円を合わせて、相続財産は2400万円になる。法定相続分どおりに分けるとすると、田中さんの分は1800万円で、義姉と甥は300万円ずつになる。預貯金だけでは2人に支払うお金が足りないので、マンションを売るしかないだろう。だが、そうなると、夫を亡くして今後の生活に不安を持つ中で、家という生活基盤を失うことになってしまう。