百戦錬磨の税理士も……

家族が亡くなってから急に直面するのが「相続」というもの。遺族には銀行口座の名義がえから始まって、さまざまな面倒ごとが降りかかる。スムーズに解決するには、やはり専門家の手を借りるのが早道だろう。いざというとき慌てないために、その道の常識を探ってみた。

まずは相続税に関して。相続税を納付しなければいけないのは、すべての相続件数のうち5%未満といわれている。つまり、よほどの資産家でない限り、相続税の納付に頭を悩ませる必要はないのである。しかし、だからといって安心できるわけではない。

たとえば、亡くなった当人の子どもたちなど相続人が複数いる場合は、遺産分割という難問が待ち受けている。「うちの兄弟は仲がいいから、法律どおり平等に分割すれば問題ない」

こう考えるのがふつうだろう。本当にそうだろうか?

現金や預貯金だけの遺産なら人数分ずつ、きれいに分けることができる。だが遺産の内訳をみると、現実には不動産もあれば有価証券や貴金属類もあるので、平等に分けるだけでも相当な苦労がともなうはず。

そのため税理士や弁護士、ファイナンシャル・プランナー(FP)など専門家の多くは「早めに遺言を作成しておくべき」と声をそろえる。「誰にどの財産を残すのかといった被相続人の考えを公正証書遺言の形にしておき、さらに『生前3点契約書』を用意しておくことをお勧めします」

数多くの遺言作成に携わってきたNPO法人遺言相続サポートセンター副理事長の本田桂子さんは、こうアドバイスする。

公正証書遺言とは、その道の専門家である公証人に依頼して作成するもので、いわば「正式な遺言書」。また本田さんのいう「生前3点契約書」とは、財産管理等の委任契約書、任意後見契約書、尊厳死の宣言書の3点で、これは本人が寝たきりになったり認知症を患ったりしたときの備えとするものだ。

したがって「相談窓口」の第1候補は、事前に公正証書遺言をつくってくれる公証人(窓口は公証役場)ということになる。「公証役場は全国に約300カ所あります。ここへまず電話して指示を仰げば、どんな書類が必要か、といったアドバイスを受けられます」(本田さん)