もっと間口の広い相談窓口はないのだろうか?「われわれFPも相続の相談をよくお受けしています」
こう話すのは、FPで「くらしの経済舎」代表の汀光一さん。FPはそもそも資産運用など生活設計全般の相談業務を行っている。そのなかで、相続問題の相談を受けることが多いというのである。
相続手続きには、前記のようにそれぞれの“士業”でなければ法律的にタッチできない仕事が含まれるので、「提携先の税理士や弁護士の方々を紹介する」ことになるのは、吉澤さんの事務所と同じである。「簡単にいえば専門家たちのコーディネート役になるのがFPです」と汀さんはいう。
保険会社などの金融機関に所属せず相談業務を行っているFPを「独立系FP」と呼ぶが、こうしたFPは全国の主に都市部で開業している。「日本FP協会のホームページから探すか、『地名』プラス『FP』でネット検索すれば、最寄りのFP事務所がわかりますよ」(汀さん)
ここで「ネット検索」というキーワードが出てきた。
ネット上で相続の相談業務を最も派手にPRしているのは、行政書士だといわれている。しかも「比較的低コストでかなりの業務を代行してくれる、依頼人にとってはありがたい存在です」(公証役場関係者)という。
ただし、いいことばかりではない。報酬を得て遺産分割協議の一方の代理人になるといった弁護士にしかできない行為(非弁行為)に乗り出してしまうなど、勢い余って法律のグレーゾーンで“活躍”し、ときには弁護士から警告を受けたり訴訟を起こされたりするケースもある。依頼人には無関係かもしれないが、こうしたトラブルによって業務の遅滞がもたらされるおそれはあるだろう。
遺産相続はこじれることが多い。とくに最近は「伝統的な“家”の考えが廃れ、相続人の権利意識が強まってきたので争いごとになる相続が多いですね」というのは、東京弁護士会所属の弁護士・園部洋士さんだ。「相続にあたってはまず、相続人や相続財産を調査し、内容を正確に把握しなければいけません。ほかの相続人が調査に協力してくれない場合もありますから、そういうときは弁護士や司法書士に調査を依頼すべきです」
もちろん弁護士を窓口にしても、司法書士や税理士と連携して動いてくれるので、実務上の問題はまったくない。結局、相続で揉めそうなら弁護士に、そうでなければ別の“士業”やFPに相談する――。こう覚えておけばいいのではないか。