患者だけが損する「差額ベッド」にご用心!

医学は日々、進化しており、新しい治療法や薬が開発されている。しかし、日本ではそうした先進医療のすべてを健康保険で受けられるわけではない。保険が認めていない治療や薬を自由診療(保険外診療)といい、費用は患者の自己負担となる。そのうえ、一連の治療の中で、仮に1回だけでも保険外の薬剤を使用したとすると、検査など、通常は保険が適用される部分も適用外となり、すべての治療行為の費用が全額自己負担となる。

図1:制度を利用すると医療費が半分以下に……<br>
図2:保険外併用療養費の種類と医療費節約法
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図1 制度を利用すると医療費が半分以下に……
図2 保険外併用療養費の種類と医療費節約法

このように保険診療と自由診療を混在させることを「混合診療」といい、基本的に日本では認められていない。それを破れば懲罰的に全額負担となるわけだ。

しかし、全く混合診療を認めないとなると、先進医療を治療の中に取り込めず、日本の医療レベルが低下するおそれがある。そこで、1984年から「特定療養費制度」が導入され、国が認めた特定の自由診療はその部分だけ患者が自己負担し、他は保険から給付することになった。

その後、規制緩和・自由化の流れの中で、2006年10月に特定療養費制度を拡大して「保険外併用療養費制度」がスタートした。新制度では適用対象を広げ、先進医療を求める患者が利用しやすいように緩和した。

新制度の適用対象は「評価療養」と「選定療養」に分かれる。前者は将来的に保険の給付対象とすることが前提で、評価中の療養として現在96種の先進医療や治験中の医薬品・医療機器などがある。

後者は患者が選ぶ特別な療養として、歯科治療の材料代や差額ベッド代などが対象となっている。

評価療養の先進医療の内容については厚労省のホームページを一読し、もし自分に関係するものがあれば、地元のかかりつけ医などに相談するといい。保険を使いながら先進医療部分のみ自己負担で受けられる。ただし、認定された病院でしか受けられず、治療費は病院が自由に決めている。治療費の高い病院が必ずしもいいとは限らないので吟味が必要だ。

かかりつけ医を持つもう1つのメリットは、こうした先進医療を行う大病院で受診するときに紹介状を書いてもらえば初診料が不要になることだ。飛び込みでいくと数千円の初診料がかかることになる。

いざ入院となったら差額ベッド代に注意が必要だ。例えば「大部屋が空いていないので一時的に個室へ」など病院側の都合による場合は差額ベッド代は支払わなくていい。なかには保険適用の大部屋が空いているのに差額ベッドから勧める病院もあるので、しっかり確認したい。

また、感染症や救急車の搬送による緊急入院では、個室に入っても患者が差額ベッド代を負担する必要がないことも知っておこう。ときにはこっそり上乗せされていることもある。

医療や保険制度を知らないと患者が損をすることが多い。しっかりと勉強して「賢い患者」になってほしい。

(吉村克己=構成)