法定相続分どおりに分けるのは無理
財産を「法定相続分」どおりに分ければ問題は起きないのでは、と考える人も多いだろう。法律上では、子どもである兄弟姉妹の法定相続分は平等とされている。だが、現実には、法定相続分どおりに財産を分けるのは極めて難しい。
特に難しいのは、「おもな財産は自宅だけ」というケースだ。
たった1軒の小さな自宅を兄弟姉妹で平等に分けることはできない。また、そこに住んでいる家族がいれば、家を売ってお金を分けることもできない。だが、自宅を兄弟姉妹のうち誰か1人がもらうと、受け取る額に大きな差がついてしまう。ここで法定相続分にこだわる人が出てくると、もめごとに発展する可能性が高くなる。
「大した財産ではない」とはいっても、家1軒は数百万円、数千万円という価格だ。相続では日常は目にすることのない大金が動くだけに、もめごとが起きやすいといえる。そして、なんとか財産を分けて、表面的にはうまくいったとしても、実は心にシコリが残ってしまった、という例も少なくない。
自宅を法定相続分のとおり“平等”に分けるのは無理だ。それより、家族全員が納得する“公平”な分け方を考えたほうがいい。たとえば、親の面倒を見た人や、これから墓を引き継ぐ人には財産を多く分ける、といった考え方は受け入れやすいはずだ。家族それぞれの事情を考慮したうえで、全員が納得する方法を話し合うといいだろう。そのためにも、普段から家族がコミュニケーションをとり合い、お互いの考えを認識しておくのが望ましい。