健康のために野菜中心の食生活を送る。糖質オフを意識してご飯やパンを抜く。そんな食生活は、むしろイライラや不安を感じやすくなってしまう。気分よく過ごすための食事法とは――。

「肉や油控えめ」の食事はご機嫌から遠ざかる

最近、気分が上がらない。ストレスで心が疲れぎみだ。そんな人は、最近の食生活を振り返ってみてはどうでしょう。

ストレスが多い生活を送っていると、甘いものを食べたくなります。しかし、甘いものを食べてもメンタル不調の根本的な解決にはなりません。

ストレスを感じると甘いものがほしくなる理由は2つ。一つは、ストレスによって脳のエネルギー消費が増え、脳が糖質を求めるため。もう一つは、ストレスで体が緊張しているのを早くリラックスさせたいから。甘いものを食べると「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンが分泌されるため、一時的にリラックスできます。しかし、この効果はあくまで一時的なもの。甘いものに含まれる白砂糖は、血糖値の急上昇と急降下を起こし、かえってメンタルを悪化させてしまいます。

メンタルを安定させるために必要な栄養素とそれが多く含まれる食品は、次ページの【図版:心と体を元気にする「最強の栄養素」12選】にまとめています。どんな食品を食べればいいかはそれを参照していただくとして、ここではメンタルを乱しがちな「食生活」について解説していきましょう。

あこ/管理栄養士。
あこ
管理栄養士。OA認定分子栄養学アドバイザー、分子栄養学実践講座認定カウンセラー、全米アライアンスヨガインストラクター。著書に『おいしく食べて、体ととのう まいにちの栄養学』(ナツメ社)など。YouTubeチャンネル「あこの栄養学」は登録者数26万人を突破(2023年7月現在)。

忙しいビジネスパーソンは、朝は食べずに昼はラーメンやおにぎりで軽くすませ、ちゃんとした食事をとるのは夜だけ、という人が少なくありません。実はこのような食生活がメンタル不調を招いている可能性があります。

朝や昼の食事が少ないということは、最も活動量が多い日中のエネルギー量が足りないということです。それでも動けてしまうのは、体が「やる気ホルモン」と呼ばれるドーパミンやアドレナリンなどいろいろなホルモンを生み出して、血糖値が下がりすぎないようにがんばっているから。こんなふうに日中にホルモンを出し続ける毎日を送っていると、睡眠の質が悪くなります。

そうなるとストレスへの耐性も下がり、メンタルが不安定な状態に。朝昼晩の1日3回しっかり食事をとることが、ホルモンの無駄遣いを防いでメンタルを安定に導いてくれます。

健康のために、「ご飯を抜く」「お肉を食べない」「油を一切使わない」などを心がけている方もいると思います。実は、それが原因でエネルギー不足になることもあるのです。人間の体はエネルギー不足の状態が続くと自分の筋肉を分解しはじめるので、体内はタンパク質不足の状態になります。すると、脳はできるだけエネルギーを使わないように指令を出すので、ホルモンバランスが乱れやすくなり、セロトニンやドーパミンも分泌されにくくなります。「最近、ものごとを後ろ向きにとらえがちだ」という方は、極度なカロリー制限をしていないかどうか振り返ってみてください。

メンタルの安定には、セロトニンを生成するビタミンD、マグネシウム、タンパク質の3つが特に重要なのですが、野菜中心の食生活を送っていると、この3つが不足してしまいます。「山盛りサラダ+パスタ」「具沢山の味噌汁+おにぎり」のように野菜中心の食生活は、一見すると健康的です。しかし、野菜と炭水化物だけでは、先ほど挙げた3つのほか、ビタミンB6、B12、鉄、亜鉛が不足しがちに。メンタルの安定には、鉄やビタミンB群も必要です。

そして、亜鉛はセロトニンを含む神経伝達物質の働きを支えます。そのため、野菜中心の食生活を送っていると気分が下がる可能性があるのです。サラダとパスタのランチセットならば、鶏の胸肉やモモ肉をソテーしてのせたりして、タンパク質をプラスしましょう。味噌汁にも豚肉や落とし卵を入れれば、タンパク質がプラスできます。