スマートフォンの通知で一日中「仕事モード」に
過緊張とは、自律神経のうち「交感神経」が過剰に働き続けている状態を指します。わかりやすく言えば、心と体のスイッチが「オン」のまま、なかなかオフに切り替わらない状態です。産業医として多くの働く人々と面談をしていると、この状態にあるビジネスパーソンが非常に多いことに気づかされます。
夜、布団に入っても仕事のことが頭から離れず眠りが浅い。顧客や上司のひと言を思い返し、イライラが募る。休日も心が休まらず、月曜が近づくと緊張感が増してくる――。こうした状態が続くと、やがて不眠症や抑うつ状態など、明確な不調へとつながっていきます。
過緊張は、病気の一歩手前の「イエローサイン」です。自分自身の状態に気づき、生活を見直すきっかけにしてほしいと思います。
自律神経とは、体温や心拍、消化などを調整する機能です。「交感神経」と「副交感神経」の2系統から成り、活動と休息を切り替える役割を担っています。
交感神経は主に日中に働き、血圧や心拍を上げ、脳を覚醒させ、筋肉を緊張させます。一方の副交感神経は主に夕方以降に優位となり、心身をリラックス状態へと導きます。本来、この切り替えは生活の流れとともに自然に行われるものです。
しかし、現代はそのリズムが乱れがちです。かつてのビジネスパーソンは、会社を出れば仕事から物理的に切り離されていました。電話やファクスが自宅に届くことは稀で、退勤すれば自動的に「オフ」に切り替えることができたのです。
ところが今は、スマートフォンに仕事の連絡がいつでも届きます。実際に通知がなくても、手元にあるだけで、意識は「オン」のまま“対応可能”な状態が続きます。
さらに、リモートワークの普及で通勤や雑談といった「切り替えの装置」も失われました。自宅の一角が仕事場になり、気づけば一日中オンのまま過ごしている。そんな相談を、面談でもよく受けます。交感神経が優位なまま心身がリセットされないのは、典型的な過緊張の状態です。
この傾向は世代を問わず広がっています。新入社員でも、緊張が抜けずに不眠や胃腸の不調を訴える人が少なくありません。フレックスタイム制などで直接の人間関係が見えにくくなったぶん、かえって気を使って疲弊してしまうのです。
本来、交感神経は“外敵から身を守る”ための緊張状態をつくる神経です。現代の私たちは、敵のいない場所で、ずっと戦闘態勢を続けているようなものかもしれません。
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