「何時間働いたか」より「どんな成果を出したか」
日本が2023年に名目GDPでドイツに抜かれ、今年にはインドにも抜かれる見通しとなりました。「日本はこのまま経済大国の地位から転がり落ちてしまうのではないか」と不安を抱いている方も少なくはないと思います。ドイツで働く私も日本の現状を見ていて、少し心配になることがあります。
私は日本の半導体メーカーで技術者としてキャリアをスタートし、30代前半でドイツに5年間駐在しました。その後、転職を経て現在は日本の半導体専門商社に所属し、欧州拠点で勤務しています。ドイツでの勤務は通算18年目になります。
日本には「ドイツと日本は国民性が似ている」と思っている方が多くいます。ルールや手順を重んじ、細部まで正確にこなすことを重視する気質。真面目に働き、努力を惜しまない勤勉さ。製品や仕事の質に対する意識が非常に高いところ。物事を計画的に進めるところなど、確かに共通点が多々あります。
しかし、実際にこの地で仕事をしていると、両国の国民性や働き方は、かなり違っていると感じます。
たとえばドイツでは、土日祝日を加えると年間約110日ほどの休日があり、個々には年間30日の有給休暇が与えられます。日本の有給休暇の付与日数の平均は18日ほどですが、実際には年間10日あまりしか取得しません。有給休暇の取得だけでも3倍です。さらに、夏休みは3週間連続で取得するのが普通で、丸々1カ月休む人もいます。基本的に残業をせず、年間労働時間は日本より266時間も少ないにもかかわらず、平均年収は日本の1.7倍、労働生産性は1.5倍と高い水準にあります。
私はドイツのやり方がすべて正しいとは思いませんが、ここまでの違いを目の当たりにすると、日本の職場にも改善の余地が大いにあると思っています。そこで本稿では日本とドイツの何が違い、なぜドイツでは余裕のある働き方が実現できているのかを、私の経験を交えながら考えてみたいと思います。
ドイツで働いて感じるのは「何時間働いたか」よりも「どんな成果を出したか」が重視されていることです。朝は早くから働き始めて、定時でさっと帰ります。周囲の目を気にして長く残るという文化はなく、やるべきことに集中して、終わればすぐに切り上げます。
私の職場でも、勤務時間中は皆が非常に高い集中力で仕事に取り組んでいます。そのかわり、終業後に仕事の話を続けることはほとんどありませんし、付き合い残業も存在しません。仕事は仕事、休みは休み。そうしたメリハリが、職場の空気として当たり前に根付いています。
それを支えているのが「役割分担の明確さ」です。ドイツでは誰が何を担当するかがはっきりと決まっており、自分の仕事に専念しやすい環境があります。個々の業務が重なりすぎないように設計されているため、仕事の無駄な引き取り合いや、余計な介入が発生しにくいのです。
もちろん、実際の仕事には隙間や例外がつきものです。うまく〝たすき〞がつながらない場面もあります。そうした場面で重要な役割を果たすのがマネジャー(管理職)です。マネジャーは全体の進捗を把握し、必要に応じて隙間を埋め、組織全体が円滑に回るように調整します。
ここから先は有料会員限定です。
登録すると今すぐ全文と関連記事が読めます。
- 広告最小化で快適な閲覧
- 雑誌『プレジデント』が最新号から読み放題
- ビジネスに役立つ学びの動画が見放題
- 会員限定オンラインイベント


