もの忘れについて考えるにあたり、まず、「人はなぜ記憶するのか」について考えてみましょう。記憶の構造を理解することで、能力向上の方法も見えてきます。食事、栄養摂取、生活スタイルから記憶術など、さまざまな観点から記憶力をアップさせる方法を紹介します。

思考や創造性などの中枢を担う「作業記憶」

「あの人の名前は何て言ったかな? 顔は思い出せるんだけれども、名前をどうしても思い出せないぞ!」

ご無沙汰してしまっていた取引先に連絡を入れようとしたのに、相手の名前がなかなか浮かんでこない。何度も会ったことのある相手だけに、頭の中の片隅に記憶として残っているのは確かで、あとちょっとで出てきそうな気がする。若い頃だったら、すぐに思い出せたはずなのに……。40代、50代になると、このような「ど忘れ」がたび重なって起きるようです。

(構成=伊藤博之 撮影=柳井一隆 図版作成=大橋昭一)