職場でいかに効率よく仕事をこなすかが問われている。脳科学者の枝川義邦さんは「職場は11分に1回の割合で邪魔が入るという研究結果がある。注意が散漫になるような状況を改善することがとても重要」と指摘する。では具体的に何をすればいいか。学びのサイト「プレジデントオンラインアカデミー」の好評連載より、第1話をお届けします――。

※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『最先端脳科学研究が導き出す 集中力アップ法、記憶力アップ法、時間の使い方……職場の脳科学 なぜ、あなたは時間を浪費してしまうのか』の第1話を再編集したものです。

こめかみを抑えて悩むビジネスマン
写真=iStock.com/Liubomyr Vorona
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自分の仕事に集中できないまま1日が過ぎていく

「今回のプロジェクトの件で、どうしても不安に思うことがあります」だとか、「本日午前中に訪問したA社との商談について報告があります」などと、部下から声をかけられた――。そんなとき、部下思いの上司は、自分の仕事を脇に置いて、その一つひとつに丁寧に対応するでしょう。そして、それらが一段落したと思ったのもつかの間、上長の役員から「ちょっと来てほしい。来期の事業計画で相談しておきたいことがあるんだ」とお呼びがかかり、必要な資料を携えて役員室に向かうことになりました。

そして、ようやく自分の席に戻り、「やれやれ」と思いつつ時計に目をやると、すでに午後2時を回っています。朝9時の始業時間から5時間以上も経っているのに、自分自身の仕事にはほとんど手を付けることができません。そうした現状を振り返って途方に暮れていると、「時間を有効に活用できておらず、浪費しているだけではないか」と暗澹たる気持ちに襲われ、次第に自己嫌悪に陥ってしまうことに……。

このような経験をされた中間管理職の方もいるのではないでしょうか。現代の中間管理職はマネジメントだけでなく、現場の仕事も受け持つプレーイングマネジャーの役割を担うことが多くなり、様々なことに対応していかなくてはなりません。以前にも増して多忙になり、自分の仕事に集中できる環境に身を置くことが、しづらくなっているようです。

一度中断した仕事に再び集中できるのは25分後

ここで、とても興味深い研究を紹介しましょう。それは、米国カリフォルニア大学アーバイン校が「作業中断の代償:スピードとストレスの増大」というタイトルで発表したものです。進めていたワークを一度中断されてしまうと、再びそのワークに深く集中するまでには25分余りかかると、その中で指摘されています。また、職場にいると電話やメール、話しかけなどの「邪魔」が、11分に1回の割合で入ってくるという別の研究結果もあります。つまり、職場は集中して仕事に取り組むことがしづらい状況にあり、生産性の低下とともに時間の浪費が発生しやすくなっているわけです。

では、どうしたら集中して仕事に取り組め、時間を浪費することなく、有効に活用できるようになるのでしょう。

スポーツ界のトップアスリートたちが、「ボールが止まって見えた」「何も考えなくても体が勝手に動いていた」などと、集中した状態での実体験について語ることがあります。そうした状態を、スポーツ心理学の世界では「ゾーンに入った」状態といいます。そのもとになった心理学での先駆的な研究が、M・チクセントミハイ博士が提唱した「フロー理論」です。ここからは、これに基づいて、どうすれば仕事に集中できるのかを考察していきます。