人間の脳を人間の脳たらしめているのが前頭前野。その機能の中でも、最も重要なものの一つがワーキングメモリです。日々の仕事の処理能力を高めるためには、ワーキングメモリを最大限活用する必要があります。まずは、あらためてその働きについて解説します。

思考や創造性などの中枢を担う「作業記憶」

「ワーキングメモリ」については、これまで何度か触れてきました。おさらいも兼ねて、その機能についてあらためて見ていきましょう。

脳の中で社会性やコミュニケーションに大きく関わっているのが、「大脳」と「前頭葉」の最前部に広がる「前頭前野」です。人間と他の動物の脳を比べたときに、最も違うのがこの前頭前野なのです。人間の前頭前野は大脳の中の約30%を占めます。動物で最も人間に近いとされているチンパンジーでも20%に及ばないのです。この前頭前野は思考や創造性など、いろいろな機能と関わりがあって、高次脳機能の中枢を担っています。そして、ワーキングメモリもその機能の1つなのです。

(構成=伊藤博之 撮影=柳井一隆 図版作成=大橋昭一)