出勤する途中の道ばたに怪我をして横たわっている人がいたら、あなた、どうしますか。

作家・天台寺名誉住職 
瀬戸内寂聴さん

下手に救急車なんて呼んだら、状況を聞かれて時間を食われてしまう。今日は重要な会議があるから、見て見ぬふりをして通り過ぎよう。こんなふうに考えるのが、普通かもしれませんね。

でも、会議に遅れるからなんて、言い訳です。人がひとり、目の前で死ぬかもしれないのを助けることもしないで、いったい何の仕事ですか。倒れている人のそばへ飛んでいって、「大変。大丈夫ですか」と声を掛けるのが、人間として当たり前の姿です。この原稿を読み直している今、通行人の誰もが素通りしたことで、怪我人が死んでしまったという中国でのニュースが入りました。ああ、ついに礼節の国だった中国までもそうなったかと胸がふさがりました。お釈迦さま(ゴータマ・ブッダ)はおっしゃいます。