「教育ママ」だけの人生で本当にいいのか
私は現在、弁護士法人きさらぎで弁護士として働いていますが、もともと「弁護士になりたい」と考えていたわけではありません。大学、大学院ともに法律とは関係のない人文系の学部でした。博士号を取得して研究者の道に進もうとも考えていたのですが、結婚して子どもが生まれ、夫が病院を開業したこともあり、病院の事務と子育て、家事を並行してこなす生活を過ごしていました。
そんな生活に転機が訪れたのは、40歳を過ぎたころです。私には3人の子どもがおり、「教育ママ」として子どもたちの中学受験を無我夢中でサポートしてきましたが、長女が中学受験に合格したタイミングで、あることに気付いたのです。
それは、子どもの大学進学と同時に燃え尽きたようになってしまう親御さんが少なくないということです。子どもの受験と自分自身の生きがいを同一視していたことで、大学受験が終わった瞬間に生きがいを失ってしまったのかもしれません。
これを見て、「子どもを大学に入れることだけが、自分の人生なのだろうか?」という疑問が生まれました。子育てや病院の事務もやりがいはあったのですが、自分の人生で新しく何かを始めたいと思うようになりました。
そこで考えたのが、司法試験(弁護士)への挑戦です。夫に弁護士を目指すことを伝えると、「勉強することは無駄にはならないからいいと思うけど、司法試験に合格するのは無理でしょ」と言われたことが、逆に私の心に火をつけました。
そして2012年、私が45歳のときに慶應義塾大学の法科大学院(ロースクール)に入学しました。ロースクールには未修と既修のコースがあり、法学未経験の私は3年制の未修コースでしたが、未修といっても実際には法学部やゼミで法律を学んだことのある人ばかり。本当の未経験者はごくわずかで、まったく知識がなかった私は課題をこなすだけで精一杯でした。
そして、私に足りなかったのは知識だけではありません。時間も足りなかったのです。ロースクールはとにかく講義が多く、家に帰るのが21時過ぎになることも珍しくありませんでした。家族の健康を考えると家事を疎かにするわけにはいかないので、家に帰って「母親」としての仕事をこなすと、机に向かえるのは23時ごろ。そこから課題や司法試験の対策をしていると寝るのが午前2〜3時というのは当たり前。そして午前5時に起きて、子どものお弁当を作る……という生活で、時間がまったく足りませんでした。
ロースクールの講義は、先生の質問に対して自分の考えを回答する講義がメインだったのですが、私は答えられないことも多く、先生から呼び出されて「ついていけてないね」と言われることもありました。端的に言って、落ちこぼれだったと思います。
それでも、私は司法試験をあきらめるつもりはまったくありませんでした。ロースクールに入学した時点で家族を巻き込んでいる以上、「医者の奥さんが趣味で弁護士を目指して、すぐにあきらめた」という結果になるのは絶対に避けたいと思っていました。「決心したからには離脱しない」と決めていたので、どれだけ厳しい状況でもやめようと思ったことはありませんでした。
勉強自体は苦ではなく、やる気にも満ちていましたが「時間と体力に余裕がある若い人たちと、同じ土俵では戦えない」ということに気付いた私は、その差を埋めるために戦略を立てることにしました。
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