コネのない60代への求人は限られている
定年を機に「転職」をする。専門領域において、一定以上の実力がある人にすすめたい働き方です。
よくあるのが、一足先に会社を辞めて同業他社に移った先輩などに声をかけられるケースです。もちろん後輩なら誰でもいいかというと、そうではありません。声をかけられるのはわりと目先が利いて応用力もある、いわゆる仕事ができる人。そういう人が定年を迎えると、先に転職した先輩から「ちょっと声をかけてみようか」と、お声がかかるわけです。
また先輩だけでなく、現役時代に通ったセミナーで知り合った講師や、名刺交換をして連絡を取るようになった勉強会仲間など、現役中に開拓した知り合いから声がかかることも少なくありません。こうして採用されることを「リファレンス採用」(推薦者がいる採用方法)とも呼び、成功するケースが多いです。現役時代にセミナーや勉強会に積極的に顔を出し、知り合いを増やして、定年前や定年時に声をかけてもらう可能性を広げるのがいいでしょう。
そうした知り合いに心当たりがないときは、状況がかなり厳しくなることを覚悟してください。私がキャリア支援をしている方々が、ハローワークで就活の相談をすると「書類審査を入れて100件程度は断られると思って取り組んでください」といわれることもあるほどです。もうこうなると、輝かしい経歴や、実績も関係ありません。とくに生成AIの発達でホワイトカラーの仕事が減っていく可能性が高く、事務職を目指す人には厳しい状況が続いていきそうです。
ホワイトカラーなら狙い目は非常勤公務員
その一方で、最近ハローワークで、今までの仕事内容が活かしやすいとすすめられる職種もあります。「会計年度任用職員」と呼ばれる、約1年任期の非常勤の地方公務員です。全国の地方公共団体などで、非正規職員の勤務条件を見直し統一するために2020年から導入されました。
会計年度任用職員の仕事内容は多岐にわたり、現役時代の専門スキルが比較的活かしやすい。例を挙げると、広告代理店から公務員に移った人は、コロナ給付金の説明チラシ作りで広告マン時代の経験を活かすなど実力を発揮。重宝がられて、契約を延長されています。また役員の秘書業務を長年されていた女性は、その調整スキルや事務能力を活かし、職場でなくてはならない存在になっています。
就活をサポートする地方公共団体も増えてきました。例えば「東京キャリア・トライアル65」という東京都が提供する事業(25年度の募集期間は終了)は、シニアの就業機会の拡大を目的に、65歳以上の人を企業に派遣。派遣社員として1週間〜1カ月働いてみて、マッチングがうまくいけば直接雇用につながるケースもあります。
このように、シニアの就活の門戸は開かれつつあります。再就職すれば人間関係をリセットし、給料も交渉次第で上げていくことが可能ですが、一方で問題も少なくありません。多くの失敗の引き金になるのが、人間関係の構築のむずかしさです。
とくに大手企業から中小企業に再就職する場合は、上から目線で人に接することが原因になり、人間関係がうまくいかないことが多いのです。新しく入社したら新入社員になったつもりで、生え抜きの社員から好かれることを第一に考えなくてはいけません。
ホップ、ステップ、ジャンプと段階を踏むのであれば、再雇用で準備を積んだあと、転職先は社会という大海にこぎ出すステップ。次のページに登場する村井さん(仮名)のように、新しい会社での経験が、自分がやりたい仕事に向けて最後のジャンプを決めるための、糧にもなるはずです。
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