部下と信頼関係を築くためにはどうすればいいのか。クロスリバー代表の越川慎司さんは「行動経済学では、非言語的コミュニケーションは相手の心を動かし、信頼を醸成するうえで非常に大きな要素だとされている。1on1の場面では“ゴールデンシルエット”を意識するといい」という――。

※本稿は、越川慎司『一流のマネジャー945人をAI分析してわかった できるリーダーの基本』(日経BP)の一部を再編集したものです。

面接を受けるビジネスマンの手
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口角を2cm上げて聴き、ゆっくり深くうなずく

1on1の場面で大切なのは、相手が「きちんと受け止めてもらえている」と実感できる空気をつくることです。

そこで有効なのが、「ゴールデンシルエット」と名付けられた表情のつくり方と姿勢です。口角を2cmほど上げ、やや歯が見える程度の柔らかな笑顔をキープしながら、相手の話に合わせてゆっくりと深くうなずく動作のことを指します。

口角が左右に開く「横の動き」と、うなずきで首が縦に揺れる「縦の動き」が組み合わさった状態が「黄金比」のように見えることから、「ゴールデンシルエット」と呼ばれているのです。

たとえば、メンバーが「最近、業務が多すぎてつらいんです」と打ち明けたとしましょう。あなたが目を見開いてただ驚いたり、「頑張れ」と言葉だけで押し返すと、相手は「この上司にはわかってもらえないかもしれない」と心を閉ざしてしまいます。

そこで、唇の両端をほんの少し上げて優しい笑みを見せ、うなずきを大きめに2~3回ゆっくり続けるだけで、「聞く姿勢があるんだな」「この人に話しても大丈夫そうだ」と感じてもらえるようになるのです。

「縦と横」の組み合わせが威力を発揮する

大げさな動作に思えるかもしれませんが、口角を2cm上げるのは、自分で思う以上に「自然な笑顔」に見えます。

少し歯が見える程度に唇を開くだけで、相手には「あたたかな人」「優しい雰囲気の人」と伝わります。

人間は横方向に広がる口元を目にすると安心感を覚えやすいと言われています。また、うなずきでは、首を深く傾けて縦に揺らすことで「あなたの話を受け止めていますよ」という思いを体全体で表現でき、同様に安心感を与えます。

行動経済学的にも「非言語的コミュニケーション」は相手の心を動かし、信頼を醸成するうえで非常に大きな要素だとされています。

言葉だけでなく、こうした仕草の積み重ねによって、相手は「自分は大切にされている」「話をじっくり聞いてもらえている」と感じるのです。

1on1を形式だけの報告会ではなく、相互理解を深める有意義な場とするためには、こうした「横と縦」の組み合わせが大いに威力を発揮します。