競馬予想会社から「絶対当たる情報がある」と高額のお金を要求されたら、みなさんは信じてお金を払うだろうか。おそらく常識的な感覚の持ち主なら、怪しいと感じて断るだろう。ただ、人間はつねに冷静な判断ができるとはかぎらない。
2008年、7割以上的中する予想方式を開発したといって馬券の共同購入を募った「東山倶楽部」幹部が、出資法違反で逮捕された。同会は全国に4000人以上の会員を擁し、会員から70億円を集めていた。また11年には、「八百長の情報がある」といって顧客に現金を振り込ませた男らが逮捕されるなど、複数の競馬情報詐欺事件が起きている。競馬情報詐欺の被害者は少なくないのだ。
もっとも、馬券購入は、何を信じるのかというところも含めて自己責任という見方もある。スポーツ新聞の予想もよく外れるが、だからといって新聞社を訴える人はいない。予想が的中しなかった場合、いったいどのようなケースなら「詐欺だ。お金を返せ」といえるのだろうか。
まず重要なのは、故意かどうかだ。詐欺罪は、相手から財産を騙し取ろうという故意があって成立する。刈谷龍太弁護士は、次のように解説する。
「たとえば『八百長の情報を独自に入手した』とウソをつけば、故意があったとみなされて詐欺罪になります。しかし、根拠のない予想でも、予想者が『自分のヤマ勘は当たる』と信じて予想を売っていたなら純理論的に詐欺に問うことは難しいです。もっとも、必勝法と銘打っているような場合、このような言い訳は通用しませんが……」