“売り”を知らずに“買い”一辺倒
「ビギナーズラック」とは、投資・ギャンブルの類に初めて手を付けた人がしばしば得る望外の利得を指す。うらやましい半面、無垢な初心者が「一寸先は闇」の世界に引き込まれる第一歩でもある。
「最初に損していたら、その時点でやめてました」――関東圏の公務員、斉藤浩一さん(仮名、43歳)は断言する。
年収は手取り700万円台。昼食は妻の手製の弁当だし、夕食も家族と一緒。同僚に飲みに誘われることもあるが、行くのは低価格の居酒屋チェーン。タバコは吸わないので月4万円の小遣いも余ってしまう。夫婦ともブランド物への関心もなく、品行方正を絵に描いたような人物だ。
そんな彼がFX(外国為替証拠金取引)で1000万円の損失を出したのは、10年前のある出来事がきっかけ。銀行で当面使う予定のない資金について相談すると、高金利の外貨預金を勧められた。150万円を米ドル建ての外貨預金にしたら、20万円儲かった。ビギナーズラックだ。
「外貨預金の成功体験が頭にあったんでしょう。パソコンを貰ったことをきっかけにFXを始めるのですが、あくまで外貨預金のつもりでした」