私は吉田猫次郎というペンネームで借金に関する書籍の執筆をしたり、中小企業経営者のコンサルティングを行っている。そのベースは、実家の事業資金の連帯保証人になったのがきっかけで、総額7500万円の多重債務となったものの、自力で債務整理を行い、借金を3000万円以下に減額し、分割で返済できるようにした10年前の実体験だ。

いま毎月1回、電話での無料相談を4人体制で受け付けており、午前10時から午後6時まで電話が鳴りっぱなしで、昼食やトイレ休憩もろくにとれない状態だ。本来、中小企業の事業再生を目的にした相談であるのにもかかわらず、そのうちの半分近くが住宅ローン関係である。

インターネットを通して相談会の告知を行っていることもあり、相談者の年齢層は40~50代が一番多い。しかし、職業や年収を見ていくと、相談者の層は実に幅広い。一般的なサラリーマンだけでなく、上場企業の管理職、堅実と思われがちな公務員、有名ベンチャー企業社長、果ては医師なども含まれる。

それだけに彼らの特徴を挙げることは難しいのだが、あえていうなら(1)頭金ゼロなど無理なローンを組んでいる、(2)不況で勤め先が減収減益になるなど仕事そのものが不安定になってきている、(3)たとえ高収入を得ていても株や不動産の投資に失敗した──ということ。

「住宅ローンの返済が苦しくなるなんて、だらしない人なんだろう」と思うかもしれない。自動車ローン、教育ローンなど多少ローン漬けのきらいはあるものの、彼らにしてみれば必要と思うものに積極的に投資しているのだ。守りよりも攻めに強いタイプが多いように思う。

具体的な相談を受ける際には、ローンの残高と、マイホームの時価を事前に調べるようにアドバイスしている。すると時価1000万円に対して残高3000万円というようなオーバーローンであることが少なくない。そうした場合には一つの選択肢として、「価値のないマイホームを維持するのに一生振り回されるような馬鹿げたことはやめてはどうか」と話す。

そういうと、すぐに「マイホームを失って一家離散」という最悪の事態を想定する人がいる。しかし、返済をとめてもすぐ家が競売にかかるわけではないし、競売にかかっても、その手続きには半年以上はかかる。その間にいろいろ対策を講じることができるのだ。最近は救済策が急増している。ぜひ前向きに情報収集してほしい。