私たちのところに電話をかけてくる人は、インターネットで借金整理に関する情報を収集するなかで相談会のことを知った人が多いだけに、合理的にメリット・デメリットを判断できる。だから私の話にうなずき、借金の整理に向けて大きな一歩を踏み出す人の割合が大きい。
しかしネットを見ない人は、そうした解決策を知らないまま、一人で悩みを抱え込むことが多い。そして、そんな情報格差が一因となって自殺という最大の悲劇を生み出している。
2009年の自殺者数は3万2753人。12年連続で3万人を超えた。経済的要因による自殺が増えているといわれているが、私はなかでも住宅ローンの返済に苦しんでいた人が多いと見ている。ある意味で、情報格差が住宅ローン自殺の境界線になっているのだ。
何を隠そう私も多重債務を抱えていたときに本気で自殺を考えたことがあり、その苦しみが痛いほどわかる。だから最後に一言いいたい。「ローンを全額返すか、それとも破産か自殺かと、両極端な考えはやめろ。住宅ローンに人生を振り回されるな!」と。解決方法は何種類もある。それに、日本は法治国家であり、万一借金が返せない事態に陥っても「死刑」になるという法律はなく、また憲法で「健康で文化的な最低限度の生活」を保障されているではないか。当然、死んで償う必要などない。どんな事態に陥っても、人間らしい暮らしはできるのだ。
※すべて雑誌掲載当時
(構成=伊藤博之)