1ドル=124円台から始めたが、為替はそれまでの円安から円高へと流れが逆転し、損切りの経験のなかった斉藤さんの口座残高はつるべ落としに。両親に事情を話して350万円借り、生命保険を解約して資金を捻出、円安を待ったが叶わず、結局1ドル=97円の時点で手仕舞った。
不幸中の幸いだったのは、手持ちの資金と両親に借りた範囲で損失が止まったことだ。ムキになって金を借りてつぎ込んだりしていたら、自宅を手放したり、自己破産のような悲惨な結果もありえた。
現在、投資と名の付くものはまったく手がけていない。
「今はどん底から這い上がりつつあり、家族で結束を固めています。コツコツ預金するほうが性に合っているし、もう投資はやらないでしょうね」
斉藤さんと違って、家族に内緒で投資に手を出す人も結構多い。関西の商社に勤める山本誠さん(仮名、50歳)もその一人だ。
「02年、同窓会で再会した友人に、『株が面白い』と勧められたんです。投資に興味はなかったのですが、税込みで1000万円を超えた年収も900万円台前半にまで減りました。どこかに焦りがあったかもしれません」
10年前に土地を購入して家を建てたのが、一番大きな買い物。建物を合わせて7000万円にもなったが、双方の親から生前贈与を含むほぼ半額を出してもらい、残りを住宅ローンで返済している。
毎月数万円もらう小遣いは飲み代に消えるが、家庭内のやりくりは妻任せ。子供の習い事や学習塾の月謝がいくらかも知らない。
「子供たちの教育費が本当に必要になるのはこれからですが、お金はあるに越したことはない。投資はそんな気持ちの表れかもしれません」
02年に現物株から始めたが、最初の数週間で元手の100万円が130万円に増えた。“ビギナーズラック”だった。しばらく200万~300万円規模の投資に留まっていたが、そこへ実父の遺産1200万円が転がり込んだ。
「03年、日経平均が8000円台で株も買いやすい頃だった。『もうちょっと増やしてやろう』と余計なことを考えたんです。カミさんに数十万円もするブランド物のバッグを買い、家族で海外旅行をしたこともありました」