150万のバッグを「じゃあ、頂くわ」

エルメス、ルイ・ヴィトン、グッチ、シャネル……。杉山香織さん(仮名、35歳)が、クローゼットを開くとブランドの紙袋が雪崩落ちてきた。

でも中身はない。クレジットカードの支払いに困ったとき、すべて中古屋に売り払ったのだ。老舗デパートで総額500万円ほどで買いあさったブランドバッグは、ろくに使わず新品同様だった。

「エルメスとヴィトンは、正価の半額で引き取ってもらえる」。妙な勉強になった。

出版社勤務だった香織さんと広告代理店勤務だった夫(40歳)が、ウェブ制作会社を立ち上げたのが6年前。出産を機に、香織さんは仕事の一線から退いたが、家計と経理はしっかりと握っていた。2004年から06年の年収は約3000万円。

「珍しいエルメスの黒カーフのバーキンを、奥様のためにキープしておきました」

高級チョコレートと香り高いお茶を前に、老舗デパートの特別室で外商担当者にささやかれると、嫌とは言えない。それが「外商マジック」だ。

「そうね、これは珍しいわねぇ……じゃあ、頂くわ」