魔法にかかったように、キラキラ光る1割引きの外商カードを出してしまう。価格は150万円。銀行口座には毎月300万、400万円が振り込まれるから、これぐらいちっとも怖くない……。友達の医師夫人に紹介された外商の世界を知った香織さんは、「デパートの売り場なんて庶民のためのショーケースなんだわ」と思った。

ブランドバッグを総額500万円、時計も夫と自分の分を3個で500万円、さらに夫の鞄やスーツで200万円。

「特別なお取り置き」を言われるままに買うことがセレブなんだと思っていた。

毎週末のようにベンツに乗り高級旅館に宿泊。高級フレンチや寿司屋に通い詰め、夫婦2人で数万円が当たり前。その間子供は高いベビーシッターに預けていた。高級外資系ホテルに家族で泊まり、シッターも呼んで子供を任せ、自分はエステを受けて一晩で20万払ったことも。友人とご飯を食べると「私が払う」とカードを出してしまう。

当然、考え方も変わった。

「××ちゃんとは遊んじゃ駄目よ」と子供の友達を選んだ。つきあうのは医師や弁護士など「上流」の子供だけ。

あるとき、地元の幼馴染みが出産祝いに5000円くらいの食器セットをくれた。香織さんは「あんなお金のない人がこんな高いものを……」と心から申し訳なく思い、3万円の商品券をお祝い返しに贈った。それきり、その友達は連絡してこなくなった。