異常水準だった“レバレッジ400倍”

金融庁主導によるFXの取引倍率(レバレッジ)規制は、2010年8月から50倍以下、11年8月からは25倍以下に抑えることと定めている。一段の規制強化に顔をしかめる向きもないではないが、これは業界全体にとっても個々の取引会社や投資家にとっても、どちらかといえば前向きな一歩と捉えるべきであろう。

思えば、かつて400倍、500倍などといった法外に高い倍率でも取引可能な取引会社が一部に存在していたこと自体が異常であった。レバレッジ400倍といえば、わずか10万円の証拠金で4000万円もの外貨取引が可能。1ドル=80円として50万ドル分のドルが売買できるとなれば、たった20銭の値動きで損益は10万円である(取引コストは考慮せず)。20銭の値動きなどというのは、ときに数分のうちに起きることであり、その間に証拠金が数倍にもなれば、ヘタをするとゼロ、あるいは持ち出しになるというのは、やはりおかしい(=過度に投機色が強い)と言わざるをえまい。

とはいえ、取引会社にとっては、投資家が高いレバレッジをかけてくれるほど、それだけ大きな収入が見込めることも確かだ。逆に言えば、レバレッジ規制がかかるほど取引会社は収益を見込みにくくなり、経営基盤の脆弱なところは存亡の危機に瀕することとなる。その実、10年8月の規制を契機として、業界内では再編・淘汰が相次ぐこととなった。結果的に、経営体質が健全かつ強固であり、広いすそ野の顧客層を抱え持つ(=安心して付き合える)会社だけが生き残れるようになったことは、広く投資家にとって好ましいことといえる。規制強化によって「FXは極めて投機的」とのイメージが薄らぐことも、多くの関係者にとって歓迎すべきことだ。

もちろん、これまでに25倍を超える倍率で取引していた投資家にとっては多少の難もあろう。場合によっては証拠金を大幅に増やすか、これまで保持していたポジションを相当に削り落とさねばならない。ポジションを落とす際に相当の損失が発生すると、それだけ証拠金が蝕まれ、新たに証拠金を差し入れる必要に迫られるケースもあるという点には注意されたい。