医療保険にお金をかけるのはやめよう

医療費を心配して医療保険に加入している人は多いが、本当に医療保険が必要かどうか、まずは考えてみよう。

(PIXTA=写真)

日本は皆保険制度を持つ国で、保険証一枚で全国どこの医療機関でも必要な医療が公定価格で受けられる。また、医療費負担が過大にならないよう、高額療養費制度というものが公的医療保険に組み込まれている。そのための保険料を私たちは終身にわたって払い続けなくてはならない。さらに民間医療保険のためにお金を割くことになれば、病気やケガの備えばかりに集中投資するバランスの悪い家計になってしまう。

保険会社が扱う「医療保険」は医療を保障する保険ではなく、約款所定の入院や手術をしたら現金給付が受けられるもの。決してよい治療が保障されるものではない。ならば医療費に充てられる現金が手元にあれば、わざわざ保険料を払って加入する必要はない。

まだ貯蓄が少ない人にとっては、医療保険に頼りたい時期はあるだろう。しかし、不安が高じて様々な特約を付加してしまうと、保険料負担が重くなり、医療保険に入っていたために治療費に事欠くという皮肉な状況になりかねない。

加えて、最近は医療費抑制のため、平均入院日数を縮小するような仕組みを診療報酬に組み込んでいるが、必要な医療は施されるので、外来治療で医療費負担が重くなることも多い。そうなると、民間医療保険からの給付は受けられず、治療費負担と保険料負担で家計が圧迫されることになりかねない。

こうした事態を避けるには、一見魅力的に見える特約の必要性を冷静に見極め、保障を絞り込んで保険料を抑え、できるだけ早い時期に医療保険をやめられるよう貯蓄を優先する必要がある。

医療保険は入院給付金と手術給付金を標準装備とし、それに女性疾病入院特約や生活習慣病入院特約、がん入院特約などを付加するというのが一般的である。しかし、標準装備の入院や手術の保障は女性疾病や生活習慣病も対象となる。また、公的医療保険で治療を受ける際、これらの治療費が他の病気よりも自己負担割合が高くなるとか、高額療養費の基準が厳しくなるということはない。わざわざ疾病を限定して保障を積み上げる意味は少ない。