郵便受けを開けると、配達員がどこかにひっかけたのか、郵便物が破れていて、入っていたはずの書類が一部なくなっている。そのせいで金銭的な被害を受けた場合、郵便局に損害賠償を請求できるだろうか。

郵便法では、損害賠償の対象になる郵便物の種類や範囲が決められている(第50条)。書留郵便もその1つ。亡失や毀損、遅配や誤配などがあったときに賠償請求でき、事前に申し出た場合は申し出た額が賠償され、申し出ていない場合は、現金なら1万円を上限、現金以外なら10万円を上限とする実損額が賠償される(簡易書留は5万円を上限とする実損額)。その他、代金引換郵便で代金を回収せずに引き渡した場合や、内容証明などの記録郵便物の亡失、毀損、遅配、誤配などで損害が生じた場合も、賠償してもらえる。

郵便法にはこのように賠償の範囲が細かく決められているが、裏を返すと、それ以外の郵便物は損害賠償の対象にならないということ。具体的にいうと、郵便事業の根幹をなす一般郵便は対象外。たとえば配達中にはがきや封書を紛失して何らかの損害を生じさせても、郵便局に賠償の責任はない。

宅配便の業者が荷物を紛失すれば当然、損害賠償の対象になる。にもかかわらず、なぜ郵便物の場合は免責されるのか。刈谷龍太弁護士は、こう解説する。

「一般企業と同じように郵便局に損害賠償責任を負わせると、リスクに備えて料金を引き上げたり、配達員が慎重に配達業務をせざるをえなくなるでしょう。郵便事業は『安い料金で、あまねく、公平に』(郵便法第1条)を目的としていますが、料金を値上げしたり配達に時間がかかるようになると、その目的を果たせなくなるおそれがあります。それゆえ民営化された現在も、郵便事業は損害賠償を一部免責されているのです」