言うまでもないが、人身売買は絶対にやってはいけない行為だ。ところが日本では、事実上の人身売買が公然と行われている。離婚後の子どもとの面会交流をめぐる問題だ。
子どもがいる夫婦が離婚する場合、よく問題になる点が3つある。「離婚の可否」「婚姻費用(離婚成立前の生活費)や養育費」「子どもとの面会交流の内容」だ。これらの問題について当事者間で合意できなければ、家庭裁判所に調停を申し立てて、話し合いを続けることになる。
家庭裁判所にステージを移した後は、「離婚調停」「婚姻費用分担調停(離婚成立後は養育費請求調停)」「面会交流調停」の3つの調停を同時に進めていく。それぞれ手続きとしては別だが、もともとはどれも離婚から派生した問題。現実には3つの問題を絡めて、駆け引きをしながら合意を目指す場合が多い。
調停における駆け引きは、なかなかシビアだ。「月2回会うことを認めるなら離婚に同意してもいい」というのは、まだかわいいほう。「慰謝料の額によっては、親権をゆずってもいい」「養育費を増やすので面会交流の回数を増やせ」といった交渉もよく行われている。これは子どもをお金で取引するようなもので、あまり褒められたことではない。子どもの親権問題に詳しい小嶋勇弁護士は、交渉の実態を次のように語ってくれた。
「調停では子どもの意思も年齢等に応じ、一定程度尊重されます。あるケースでは、子どもが『ママと離婚してくれたら、会ってあげてもいい』と言ったと調査報告書に書いてありました。誰が見ても、子どもが母親に無理やり言わされていることが明らか。自分の要望を通すために子どもが道具にされています」