ただ、お金を含めてあらゆる手段で駆け引きをする親の気持ちもわからなくはない。調停で決着がつかなければ訴訟、審判に進み、裁判官が離婚の可否や養育費、子どもと会える回数などを決定するが、現状では、子どもとの面会交流の相場は月1回程度だからだ。これは諸外国に比べて圧倒的に少ない。

月1回程度の約束が履行されないケースもある。取り決めどおり面会交流させてもらえない場合は、子どもを引き留めている元妻・元夫に対して裁判所から「履行勧告」してもらうことができるが、勧告に強制力はない。また審判の決定を履行しない元妻・元夫に対して金銭のペナルティーを科す「間接強制」も可能だが、たとえお金をもらっても、わが子に会いたい気持ちは満たされないだろう。

こうした現状に絶望している親があらゆる手を使ってわが子と会おうとする行為を一概に責めることはできない。問題は、わが子を愛する親に事実上の人身売買をさせる現在の仕組みのほうにあると考えるべきだ。

では何を変えればいいのか。小嶋弁護士はこう提案する。

「面会交流は離れて暮らす親と子どもにとって権利であり、子を監護する親にとっては義務だと考えます。ところがいまは面会交流の法的位置づけが曖昧。法律で面会交流は義務だと明記し、不履行の場合の履行方法を明記することで、制度や裁判所の運用も変わるでしょう」

最後に「個人的意見ですが」と断ったうえで、小嶋弁護士はこう付け加えた。

「私が見ているかぎり、子どもがいる夫婦でハッピーエンドの離婚はほとんどなかった。子どものためを思うなら、成人するまで離婚をこらえたほうがいい。月並みですが、それが子どものためには一番の解決策です」

(文=ジャーナリスト村上 敬 図版作成=ライヴ・アート)
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