働きがいを左右する3つのキーワード
【澤円】働きがいといっても、ちょっと抽象的な印象も受けます。越川さんは、働きがいをどのようなものだと分析していますか?
【越川慎司】働きがいについては、「働くうえで幸せを感じるとき」というシンプルな言葉で定義づけました。そして、815社、約17万3000人のビジネスパーソンを対象に調査したところ、働きがいに大きな影響を与える3つのキーワードがあることがわかりました。それは、「承認」「達成」「自由」の3つです。
承認はわかりやすいですよね。「お客様に『ありがとう』といってもらえる」「上司に褒められる」「昇進・昇格する」といったことで満たされます。
ふたつ目の達成は、「営業目標を達成する」「プロジェクトを達成する」など目標を達成することで満たされます。しかし、先の調査では56%の人が行動目標を持っていないことも同時にわかりました。どうすれば評価されるかがわからなければ、達成を感じることはできません。
だからこそ、リーダーの立場にある人には、たとえば経理部の部下との対話のなかで「経理処理の時間を10%減らして新たなプロジェクトに参画しよう」といった具体的な行動目標をつくっていくことが求められます。
最後の自由は、与えられる自由ではなく「自ら勝ち取る自由」を意味します。たとえば、いまはリモートワークを希望する人が大きく増えていますよね? 成果を上げて周囲から承認され、自分が希望していたリモートワークを勝ち取るといったことにより、働きがいというものを感じられるようになるのです。
どの要素を重視するかは人それぞれ
【澤円】承認されたからこそ自由を勝ち取れるという、いまの例などまさにそうですが、これら3つの要素は密接に関連しているものだと感じます。
【越川慎司】まさしくその通りです。目標があるから達成する、達成する人は承認される、承認される人は自由を勝ち取れる――そういった流れがあることがわかってきました。もちろん、なかには3つの要素のうち達成をより重視する人もいれば承認を重視する人、自由を重視する人もいます。ですから、リーダーの立場にある人には、メンバーそれぞれがどれをもっとも重視しているのかを理解したうえでサポートすることが求められます。