ビジネスを成功させる「センス」とは何か。創業6年目で年商43億円を稼ぐアパレル会社「yutori」代表の片石貴展さんは「昔は『一生懸命さ』だけでも評価されたが、今は違う。儲かるタイミングを逃さないための『タイパ』も求められる」という――。

※本稿は、マイナビ健康経営のYouTubeチャンネル「Bring.」の動画「時代の流れを掴み、ビジネスを創造する。新進気鋭の経営者が語るイノベーション思考の生み出し方」の内容を抜粋し、再編集したものです。

SNSやネットを見て「大局観」を掴む

【澤円】yutoriは革新的なビジネスのアイデアを次々と実現していますが、片石さんの頭のなかがどのように働いているのか、そのイノベーティブ思考に興味があります。普段考えていることや行動、習慣について教えてください。

【片石貴展】Instagram、X、TikTok、YouTubeをはじめ、数多くのSNSや動画、ネット上の情報を昼夜問わず幅広くリサーチしていますね。そうする理由は、インプットが一定量蓄積されると、情報を「解釈」する力も上がっていくと考えているからです。それによって、まるで複利のようにインプットの質が上がっていき、得られる情報量としても平均的な人の何百倍も多くなっていくイメージを持っています。

そうしたインプットの蓄積を基にして、特に「大局観」を掴むことを意識しています。自分や自社のことをできる限り客観的に捉え、適切にビジネスのアクションへとつなげていくという感じです。

例えば、yutoriがZOZOグループの傘下に入った2020年7月当時、yutoriに若い社員がたくさん集まっているためか、どこかサークル的な雰囲気のベンチャー企業のように見られる側面がありました。そこで、周囲から見たときの説得力をつけるという明確な意図もあり、ZOZOグループに参画したのです(東京証券取引所への新規上場に伴い、現在はZOZO傘下を離れている)。

「売上高30億円」でどうインパクトを残すか

2023年12月に東京証券取引所グロース市場へ上場する際も、そのタイミングで上場すれば「アパレル業界で史上最年少上場」というインパクトを与えられることを意識したからです。クリエイティブ領域における事業を有し、売上高が30億程度の会社なら他にだって存在しますからね。

【澤円】自分たちが「どう見られているか」を客観的に認識し、綿密な事業展開をしているわけですね。加えて、必ずなんらかのサプライズやインパクトがある仕掛けをしていく。

【片石貴展】上場後は、Z世代に向けたアパレル事業で一定の規模感を持つ当社が、どのような新規事業を展開するのかに注目が集まりました。そこで、上場3カ月後のタイミングで、周囲の予想をいいかたちで裏切るyutori初のコスメブランド「minum(ミニュム)」をリリースしました。

2024年8月には、アパレルブランド「Her lip to」を展開し、元AKB48の小嶋陽菜さんが代表取締役CCOを務める株式会社heart relationを子会社化しました。このように、世間の想像を少しずつ超えていく仕掛けをすることはかなり意識しています。そうしたアクションの一つひとつが、yutoriがさらに成長していくための起爆剤となっています。

小嶋陽菜さん(左)と片石さん
写真提供=片石さん
小嶋陽菜さん(左)と片石さん