「一生懸命さ」と「タイパ」のバランスこそがビジネスセンス

【澤円】ビジネスを成功させるための「センス」についてはどう考えますか? ビジネスセンスがある人は、普通の人と比べてなにが違うのでしょう。

【片石貴展】ビジネスセンスを「利益をつくるセンス」と捉えると、「タイパ」と「一生懸命さ」のバランスがいいかどうかが鍵になると見ています。

どういう意味かというと、タイパが高くて効率的な仕組みがあるからこそ、もっとも重要な部分にリソースを割くことができ、そこから利益を生み出せるということです。一生懸命に取り組むのは当然のことですが、なんでもかんでも一生懸命に取り組むだけでは、大きな利益を生み出すことはできないでしょう。

ブランドの価値を積み上げていくことも、ビジネスの効率性につながります。ブランドの価値があれば、たとえ高価格帯の商品であってもしっかり利益を出せるわけですからね。

個人に話を戻すと、仕事やプロジェクトを成功させるには、自分のもっとも重要な価値を積み上げていくことにリソースを割くことは重要なポイントです。その裏には、それ以外のものを「効率化する」「楽をする」というタイパ的な側面があるということです。

逆に、タイパばかり重視してもクリエイティブな仕事はできません。重要な領域に打ち込む「一生懸命さ」とのバランスが必要だというわけです。

ファイルフォルダの山と職場
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効率化しないと成長のタイミングを逃すこともある

【澤円】人によっては、「楽をするのは悪いこと」だと思い込んでいる人もいますよね。それこそ昭和や平成時代に働いてきたビジネスパーソンのなかには、「猛烈に働く=いい仕事をしている」と定義したがる人たちもたくさんいます。

【片石貴展】正直なところ、猛烈に働いたかどうかは、ビジネスの結果には関係がないですよね? そうではなく、マーケットの大きな流れがあるうえで、どのタイミングで、どのアングルから参入するかが勝敗を分けるのではないでしょうか。

例えば、いまyutoriが取り組んでいる事業であっても、仮にいまのタイミングからスタートしてこの成長速度になるかというと、絶対になりません。やはりSNSマーケティングの黎明期に、独自のD2Cを展開したから急成長できたわけです。

現在は、誰もが利便性を提供し続けてくれる時代です。当社もビジネスの基盤となるインフラや物流の仕組み、自社サイトの構築に至るまで、いかに既存のテクノロジーを効率的に活用するかを考えています。重要領域にリソースを集中させるために、自分や自社を客観的かつ大局的に認識することが、成功の鍵を握ると思っています。