配転トラブルは隣人トラブルに似ている
技術者として実績を積み上げてきたのに、なぜかリストラ候補に。退職勧奨を断ったら、いきなり配置転換になって倉庫係を任じられた。このようなときは泣き寝入りするしかないのだろうか。
原則として、従業員は配転命令を拒否できない。ただ、場合によっては配転命令が人事権の濫用と認められて、無効になることもある。
どのようなケースで配転が無効になるのか。まずチェックしたいのは労働契約だ。採用時に交わした労働契約に勤務地や職種について限定した特約があれば、それに反した配置転換は無効になる。一般的な総合職にこうした特約がついているケースは少ないが、最近は職種別採用を行う企業も増えてきた。また労働契約に明示がなくても、技術職のように専門性の高い職種の場合、勤務地や職種が事実上限定されていたと裁判で認められる可能性もある。
業務上の必要があるのかどうかという点も重要だ。判例では、「労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化」といった観点から必要性が認められれば、権利の濫用にはあたらないとされている。
とくに注目したいのは、労働者の能力開発だ。冒頭にあげたように技術職から倉庫係へと飛ばされるケースは、労働者の能力開発につながっているとはみなされにくい。技術職で蓄えた知識が倉庫係に活きるわけではなく、逆に倉庫係を通して学んだことが、いずれ技術職に戻ったときに役に立つわけでもないからだ。