「不利益な取り扱い」は禁止されている

2011年度の雇用均等基本調査によると、女性の育児休業取得率は87.8%に達して、過去3番目に高い取得率となりました。女性の育児休業取得が高まるのは歓迎したいところですが、一方で復職後のトラブルも目立ちます。その典型が、戻ってきたら閑職に異動させられたというケースです。

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不利益な取り扱いとされる具体例

育児介護休業法では、育児休業を取得した社員に対する不利益な取り扱いを禁止しています。育児休業から復帰した社員が、それを理由に不利益な配置転換を命じられたら、社員はそれを拒否することが可能です。

ただ、人事権は経営側に認められている権利であり、人事異動そのものは禁止されていません。復職後の人事異動が不利益にあたるかどうかは、社員が受ける不利益の程度と、配置転換を行う合理性のバランスを見て判断されることになります。

一般的に不利益と見なされやすいのは、賃金その他の労働条件が著しく変化した場合です。たとえば育児休業前は役職者であった社員が復帰後に役職から外されれば、合理性のある人事異動とは見なされにくい。また、これまで正社員であった人をパートに転換させることも合理性があるとはいえないでしょう。

異動によって通勤時間が大幅に延びた場合も、不利益な異動と判断される可能性があります。たとえば子どもの保育園の送り迎えが可能かどうか、またその代替手段があるかどうかを確認せずに遠方の事業所に配置転換すれば、会社側が配慮を怠ったと見なされます。

では、逆に子育てに配慮して家から近い場所に異動になったものの、総合職だった女性が工場勤務になり、パートと同じ仕事をやらされることになった場合はどうでしょうか。このケースでは、目に見える明確な不利益はありません。会社側も「いろんな仕事を経験させるために必要な異動だった」と主張することが可能であり、通常の人事権の範囲と考えられます。賃金が下がるなどの不利益がないかぎり、異動を受け入れざるをえないでしょう。