ちなみに、必ずしも復職時の賃金引き下げが許されないわけではありません。09年の育児介護休業法改正により、企業は3歳未満の子どもを養育する従業員について、従業員が希望すれば利用できる短時間勤務制度を設けることが義務づけられました。短時間勤務制度は、1日の労働時間が原則6時間。勤務時間が短くなれば、それに応じて賃金も引き下げられます。つまり本人が短時間勤務制度の利用を申し出た場合は、賃金はおのずと下がるのです。
もちろんこの制度を会社側から強要するのはアウトです。本人が望まないのに勤務時間を短縮させたら、不利益な取り扱いにあたります。
もし不利益な取り扱いを受けたと感じたら、各都道府県労働局に設置されている雇用均等室に相談するといいでしょう。ここは育児休業法や男女雇用機会均等法が定める事項に関する紛争について、助言や指導を行ってくれる行政機関。会社に何らかの法違反があれば、指導を実施します。労働基準監督署ほどの強制力はありませんが、自分で会社と直接交渉するより、ずっと効果的です。
会社側にもアドバイスを1つ。育児休業取得者の復職については、原則として取得前の職務に戻すことを前提にしたほうがいいでしょう。それによってさまざまな支障が生じ、求められる職務や職責を果たすことが困難な状況が見られれば、配置転換を実施しても合理性が認められやすいはずです。その際も、対象者とよく話し合うことが大切。育児の負担は1人1人違うので、個別の事情に応じて柔軟な対応を心がけてください。
(構成=村上 敬 撮影=坂本道浩)