景気の二番底が懸念されるなか、雇用の過剰感は解消されていない。もともと少子高齢化で若年層が減少する一方、中高年の割合が上昇したことで、深刻なポスト不足が発生していた。これに拍車をかけたのが今回の大不況であり、特に30代以降のホワイトカラーの人たちの人余り現象が深刻になったのだ。
そうしたなか、雇用調整を実施する企業が増えている。希望退職者を募る企業もあるが、それはごく一部。「マスコミに騒がれるとイメージ・ダウンだし、退職金を上積みする余裕もない」と、表向きは出向や転籍という手段をとる企業のほうが多いのだ。
まずは本体から社員を切り離し(=出向)、さらに給与体系が本体より低い企業に移管させる(=転籍)ことで、人件費の削減を図り、あわよくばやる気をなくさせ、自己都合退職してもらうことを狙っている。
最近の傾向として、そうした措置が力ずくになっているようだ。「人事異動は就業規則にも明記されており、受けなければ業務命令違反で解雇の対象だ」と強制する。それでも駄目な場合、「今の職場に仕事はない」「同僚のお荷物だ」「受け入れ先があるだけでありがたいと思え。これを逃すと次はない」と、損得勘定に訴えながら追い込んでいく。ここまで言われると大概、断れない。
厚生労働省所管の公益法人、産業雇用安定センターの調査によると、「本人を説得して出向させる」と答えた企業が1997年は26.8%だったが、2000年は57.1%と倍増している。同じ調査を現在行ったら、さらに数字が跳ね上がるのではないだろうか。
出向や配置転換(左遷)によって処遇がすぐに悪化することはないものの、安心は禁物だ。間接的な手段による処遇面の切り下げが待っている。典型的なのは、業績が上がりにくい職場に追いやり、人事考課を下げることによって賞与を減額する、というやり方である。