現在は「ライフプラン受難の時代」だと思う。その主たる原因は賃金ダウンの圧力だ。その象徴的な出来事が住宅ローンの返済に困窮するビジネスマンが増えていることである。

2009年12月4日に施行された中小企業金融円滑化法は、金融機関に住宅ローンの借り手から負担軽減の相談があった場合、できる限り対応するよう求めた。その結果、ボーナス分の返済月に当たる10年1月に入って、金融機関の窓口には数多くの相談者がつめかけるようになったのである。

09年の冬のボーナスは前年比1割減といわれる。しかし、それはあくまでも平均値である。なかには、半減、それこそゼロという人だっていたはずだ。仮にここで返済期間を30年から40年に延長して、月々の返済額を減らすことができたとしても、それは急場をしのぐための“カンフル剤”でしかない。

マイホームはライフプランを支える大きな柱である。それがいま大きく揺らぎ始めている。そうした状況を肌身で感じ、先々に対する不安をさらに募らせる。だから、たとえ高度なスキルを持っていたとしても、それを転職して活かそうとはせず、いまいる職場にしがみつこうとする。かくして労働市場はますます固定化されていくことになる。

では、賃下げ圧力は弱くはならないのだろうか。“賃金と企業収益の塊”ともいえる名目GDP(国内総生産)が6四半期連続でダウンし、年間換算で479兆円と17年半ぶりの低水準に落ち込んでいるような状況では期待薄であろう。大半の企業は賃金を減らすことでしか、営業利益を稼ぐことができない状態が当面続くものと考えられるからだ。

確かに事業拡大のため、一部では設備投資に打って出てくる動きも見られるだろう。しかし、それが賃金に反映されるのはまだ先のことで、せいぜい所定外賃金の残業代が多少アップするくらいのもの。ベースアップなど到底望めそうになく、所定内賃金が落ち込むという歪な賃金構造が形成されていきそうだ。