そして、賃金ダウンとともにライフプランを揺るがす要因になるのが公的負担の増加で、特に影響が大きいものが厚生年金の保険料率アップだ。2004年から保険料を算定する標準報酬月額に対する保険料率が13.58%から毎年0.354%ずつ引き上げられ、最終的に17年の18.30%まで上昇する。保険料は労使折半なので、ビジネスマンの負担は毎年0.177%ずつ増えていく。
その分を何でカバーしていくかというと、貯蓄の取り崩しである。すでに08年度の家計貯蓄率は2.2%にまで低下しているが、このダウントレンドはさらに続きそうだ。最悪の場合、貯蓄をすべて取り崩して借り入れで賄い、貯蓄率がマイナスという世帯が増えるかもしれない。
また企業サイドから見ると、この厚生年金の保険料率のアップは実質的な人件費のアップと映る。そうなると、厚生年金の加入対象外である派遣社員やパート・アルバイトなど非正規社員を使ったほうが得との判断が働き、正社員の雇用リスク上昇という副作用をもたらす。どちらにしても正社員は厳しい時代を迎えているようである。
数少ない明るい話題は子ども手当の支給であろう。対象者は総世帯の19.4%だが、その多くは20代、30代を中心とした若い世帯だ。バブル崩壊後に社会に出てきた彼らは賃金ダウンの圧力を絶えず受け続けてきただけに、大きな恵みになるはず。公的負担増を軽減する効果も期待でき、消費拡大へつながっていこう。
もっとも、子供が高校生以上になってしまった40代や50代のビジネスマンは横目で見ているほかない。
※すべて雑誌掲載当時
(構成=伊藤博之)