日本航空(JAL)が2010年1月19日に会社更生法の適用を申請し、即日手続き開始の決定を受けた。2兆3200億円もの負債総額に、国民の誰しもが驚きの表情を隠せなかった。

しかし、そこまでに至る過程での大きな山場が約2400億円の積み立て不足に陥った企業年金の処理であった。結局、現役社員、OBら全受給者の3分の2の同意を得て、年金額をそれぞれ3~5割減額する交渉がまとまったことはまだ記憶に新しい。

たぶん多くの人が「国の公金を使ってまでJALの企業年金を救済するのは間違い」と思っていたはず。しかし、今回の出来事は決して対岸の火事ではない。「企業年金大崩壊」の序曲にすぎないのだ。あなたが加入している企業年金も実は大幅な積み立て不足を起こしており、将来、老後の生活資金としてあてにしていた年金を手にできない恐れが十分にある。

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急低下する厚生年金基金の利回り

全国民が加入する「国民年金」、サラリーマンが加入する「厚生年金」の2つの公的年金では足らない部分を補完するために設けられたものが「企業年金」である。この企業年金を目的別に見て、退職一時金を積み立てておく「適格退職年金」と、年金の形で支給していく「厚生年金基金」の2つに大きく分かれる。まず、この厚生年金が大きく傷んでいる。

たとえば私の地元中京地域で約800社が加入している、ある厚生年金基金は、2007年度に223億円、08年度には284億円の運用損失を出している。合計で507億円。その分まるまる積み立て不足となっているわけで、それを加入員数3万8560人で割ると、一人当たり約131万円にもなる。

厚生年金基金は当初想定した利回りでの年金支給を約束しており、今後株価上昇などで運用益が出ないままだと、加入企業が穴埋めする必要が出てくる。しかし、斜陽化した産業の企業が多く加入しており、受給者にしわ寄せされる可能性が高い。ちなみに厚生年金基金連合会がまとめた基金全体の08年度の利回りはマイナス19.8%だ。