うつ病の増加が社会問題化し、うつ病に対する認知度も高まってきた。とはいえ、うつ病に対する誤解も多い。

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急増する気分障害患者

最近、「プチうつ」「新型うつ」といった言葉を耳にすることがあるが、私の見解では、それらはうつ病ではない。確かに、近年のうつ病の国際的な診断基準では、単に気分の落ち込みがひどいケースでもうつ病と診断されることが多い。しかし、本来、うつ病は一時的な感情の起伏によるものではなく、正常な精神状態が質的変化を起こしたものなのだ。

精神医学では、いわゆる中核的なうつ病の気分を「抑うつ気分」と呼ぶ。人間は正常な精神状態であれば、喜怒哀楽といった感情を自然に表す。ところが、抑うつ気分になると、そうした感情表現が乏しくなる。重症になると、無表情になり、文字通り無感情の状態になってしまう。

私は産業医としてこれまで数多くの企業のビジネスマンを診察してきたが、彼らの間で中核的うつ病が確実に広がっている。これは1960年代からの傾向で、バブル経済の崩壊以降、とくにこの10年間でジワジワと増えているように思える。また、その病態も大きく変化しつつあるというのが実感だ。

従来、中核的うつ病は40代、50代の中高年に多く、生真面目で几帳面な人がかかりやすかった。ところが、最近では中高年だけでなく、35歳以下の若年層にも増え、しかも、生真面目・几帳面でない人でも発症するようになっている。

そこで、私は、こうした中核的うつ病の新しい病態を「現代型うつ病」と呼ぶことにした。そんな現代型うつ病が増えている要因として、次の2つの変化に注目している。