ポイントは「相手を話の中心に据える」こと
ここからが共感力を高める重要なポイントです。
ここで注意したいのは、「旅行=電車、旅館、温泉、ご馳走……」などと、「旅行」そのものに想像の焦点を当てないようにすること。
では、何を想像するのか。それは「相手自身」です。
もちろん、電車、旅館、温泉、ご馳走などを想像するのは結構ですが、焦点を当てるのはあくまで相手自身です。
電車(飛行機)に座る相手、旅館に入りくつろぐ相手、温泉につかる相手、ご馳走を食べる相手……。あなたの想像の中心に、ドンと相手を置きましょう。
この話の流れですと、その隣には奥様も置かないとなりませんね。
すると、いきなり「どこに行くの?」などと質問はしなくなるでしょう。
旅先での二人を想像できたら、その状況を自分のこととして感じてみます。
すると、あなたの口からはどんな感想がもれるでしょうか。
質問よりもまず、その映像から感じる「気持ち」を言葉にすることが重要です。
「いいね♪」
「うらやましい」
「仲がいいね」
これで相手には、あなたが自分のことをしっかり想像してくれていることが伝わります。そして、自分に関心を持ってくれている様子に、相手はとても大きな喜びを感じます。
このように相手の状況(場面)を想像し、さらにその映像、その気持ちを自分が体験しているかのような感覚になることが共感の奥義といえるでしょう。
あなたの口から出てくる言葉は、もうひと事ではなく、自分に起こったことのように豊かな気持ちであふれています。
つまり、相手が描く映像の中にあなたも入り込んで、その気持ちを分かち合う。これがコミュニケーションの神髄となるのです。
お互いの頭の中が「話の種」でいっぱいになると
実は聞き手がうまく共感すると、話し手の中でイメージが爆発するような瞬間がやってきます。
【話し手】今度、妻と旅行に行くんだよ
【聞き手】へーっ♪ いいですね。仲がよくてうらやましい
【話し手】いやいや、旅行に行ってもケンカばかりですよ
【聞き手】長いこと一緒にいると、ケンカもしますよね
【話し手】うちのは気が強くて
【聞き手】あ! それは怖いですね
こんないい共感をもらえると、話し手の中に映像が次々に浮かんできます。
電車に乗って一分で、もうケンカが始まった。
実は、何でケンカしたのか思い出せない。
妻はおいしい饅頭を食べたら、すぐに機嫌が直る。
このように、話し手には話すことが次々に浮かんできます。
ほとんどの話し手は、それを自分の能力だと思っています。しかし、話し手のイメージをふくらませたのは、実は「聞き手の共感」だったのです。
聞き手の感情豊かな共感で、話し手には受け入れられている安心感が広がります。すると、想像力がどんどん豊かになるのです。
さらに共感をしているほうの聞き手も、想像力がふくらんで聞いてみたいこと、話してみたいことがどんどん湧いてきます。こうして二人は、話したいことと聞きたいことをたくさん浮かべて話をすることになるのです。
これは話を焦らず、共感を行なって、ゆっくりとした展開をつくったから生まれた関係。お互いが話の種をたくさん手に持って話をするのです。話がはずむわけですね。
会話は実は聞き手がリードしている。そういわれる所以がここにあります。
共感と脳の活性化の関係
人間は、他人の感情に触れると脳内の神経細胞が急速に発達し、ほかの神経細胞とつながり合うことがわかっています。気持ちの入った共感をもらうと、話し手のイメージがふくらむのは、こういったことが理由のようです。