「地面にあいている穴ぼこ」を埋める

【養老】僕は仕事というのを、「世間のニーズ」だと定義しているんです。世間のニーズがどこにあるかわかんない。たとえていえば、「地面にあいている穴ぼこ」があるとする。それを埋めるのが仕事で、埋めて歩きやすい道にしたらみんなが「ごくろうさん」とお金をくれる。穴ぼこを「ニーズ」と呼んでいる。

【名越】そのたとえはすごく分かりやすいですね。確かにそうかもしれない。僕は日常のくだらないことでもよく驚くのですが、昨日、風呂場の下水が詰まりましてね。いまは何でも売っている世の中なので、ゴミを取るネットがあるんですね。ゴミ取りネットを作った人は、自分自身も詰まらせたことがあったのかはわからないけれども、詰まることを防止する物を作ったら困る人が少なくなるというふうに思ったんでしょうね。養老先生の言葉を借りれば、地面の穴ぼこがあるなというニーズに気づいて、それを埋めたわけですよね。だから、そのゴミ取りネットを生み出した人に、みんなお金を払う。

臨床医になったら、何人殺すかわからない

――養老さんは、なぜ医師になろうと。なかでも解剖医になろうと思われたのはなぜなのでしょうか?