初対面の相手の心を掴むには、どうすればいいのか。フリーアナウンサーの古舘伊知郎さんは、「初めて会う人との対談では、誰もが知っている話題ではなく、あえて違う角度からアプローチすることで、印象に残せる。事前の準備を通じて独自の切り口を見つけ出すことが、対談の成否を分ける」という――。
※本稿は、古舘伊知郎『伝えるための準備学』(ひろのぶと)の一部を再編集したものです。
実際に会う前から、何度も「会っている」ぐらいにしてしまう
取材やイベント、雑誌対談などでは、しばしば、初めてお会いする人とお話しすることがある。
ここはもう、勝負どころだ。この「出会いの第1打席」で粗相があってはいけない。よく知っている人との対談と比べたら、準備率は急上昇。偶然に出会ってしまう場合は別として、取材など事前にお会いするのがわかっているときは、どれだけ念入りに準備するかで「初めまして」から始まる対話の行く末は決する。
脳内でイメージトレーニングを繰り返す。実際に会う前から、もう何度も勝手ながら「会っている」くらいにしてしまうのが、準備の時間だ。
では、この「出会いの第1打席」に向けてどんな準備をするべきだろう。
『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんと対談
先日、ある雑誌の企画で漫画家のヤマザキマリさんと対談することになった。
漫画を読む人なら、この名は誰もが知っているだろう。まず何といっても『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)を思い浮かべる人が多いと思う。
ヤマザキさんは、17歳でイタリア・フィレンツェの国立美術学院に留学し、11年間、その地で美術史と油絵を学んだ。現在もイタリアを拠点とし、日本とも行き来しながら漫画家、画家、随筆家として活動されている。美術の専門家であるのはもちろん、古代ローマ史などイタリアの歴史にも造詣が深い。
さて、どんな話を彼女としようか。