老後に必要な金額はどのくらいか。精神科医の保坂隆さんは「老後資金は『年金のほかに最低でも2000万円、ゆとりのある老後を送りたいのならさらに4000万円、合わせて6000万円ほどの蓄えが必要』といわれるが、世の中のほとんどの人は『ポケットの中の小銭』で暮らしているのが実状だ。年金暮らしの心得は『何とかなる。何とかやっていく』ことである」という――。

※本稿は、保坂隆『お金をかけない「老後」の楽しみ方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

コインケースと小銭
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年金暮らしの心得「何とかなる。何とかやっていく」

年金をもらう年齢が近づいてくると、自分が受け取る年金額についての知らせが届きます。それを見て、多かれ少なかれ、不安を覚えるのは当然というべきかもしれません。

厚生労働省の発表によれば、2024年度の厚生年金の標準的な額は、夫婦合わせて月額23万483円(夫が平均的収入・年収526万円前後で40年間就業した場合)とのこと。

これには夫と妻の基礎年金も合算されています。自営業などで夫婦とも国民年金であれば、月額13万円ちょっと。

「この年金では足りない……」といくら嘆いてみても、天からお金が降ってくるわけはなく、この範囲で何とか暮らし、足りない分はいままでの蓄えを取り崩していくほかないのが老後の暮らしです。

現役時代の半分程度と考えると、不安になるのも分からないではありませんが、住宅ローンや子どもの教育費など「人生の二大出費」はほとんどの場合、終わっていることが多いでしょう。

「案ずるより産むがやすし」と言うように、実際に年金暮らしを始め、半年もして慣れてくると、不安を口にする人はめっきり減ってくるようです。

「蟹は自分の甲羅に合わせて穴を掘る」という言葉もありますが、人も自分のサイフのサイズに合わせて、ちゃんと暮らしを軌道修正していく知恵を持っているのでしょう。

何とかなる。何とかやっていく――。これが年金暮らしの心得です。