頭が良い人と悪い人は何が違うか。医師の和田秀樹さんは「日本ではもの知りであることが尊ばれるという傾向がとても強いが、『もの知り=頭が良い』ではなく、知識の加工能力が必要だ。池上彰さんの番組を見て『ああ、そうだったのか』的な納得の仕方をするのは、初等中等教育レベルの人間とみなされ、知的な人物ではないと判断される。アメリカの高等教育以上のレベルの人たちがそうするように、『自分独自のものの見方、考え方を展開できるか』『知識を思考の材料としてどう活用できるか』が重要だ」という――。
※本稿は、和田秀樹『60歳からは勉強するのをやめなさい』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
「もの知り=頭がよい」は大間違い
締切の迫った仕事もなく、今晩は少しゆっくりできるかなと思ってテレビをつけると、「……。またやってんのか……」。
その晩のテレビも、視聴率がラクに稼げてお茶の間でも大人気のもの知りクイズ番組を流していました。
いやな番組でも、とりあえず見てからものを言おうという主義のわたしは、こうしてしばらくは番組を観察。しかし、結局ため息をついてスイッチを切ることになります。
それにしても、この国ではもの知りであることがことさら尊ばれるという傾向がとても強く、「もの知り=頭がよい」という、じつに短絡的な評価をたやすく得ることができる仕組みになっています。
もの知りクイズチャンピオンになったタレントや芸人は、それだけで人気者になりクイズ番組の常連の座を勝ち取ります。しかし、わたしに言わせれば、これっぽっちもすごいことではなく、なぜそこまで称賛を集めるのかが理解できません。
たとえば芸人でクイズチャンピオンという人がいますが、たしかにものは知っているのでしょうが、肝心の本業の漫才がちっとも面白くない。
つまり知識量はチャンピオンになるくらいあるのに、知識の加工能力がきわめて低いため、芸に生かすことができず伸びていかないわけです。